サンフランシスコ便り 2005
第2章 予感
2004年、私にとって始めてのサンフランシスコの夏は冬のように寒い日々が続いた。サンフランシスコの夏は寒いので有名だが、その年は例年よりも並外れて寒いとのことだった。眩いばかりに太陽が輝いていて、いかにも暑そうに見える景色とは裏腹に、空気はからからに乾燥していて冷たかった。
そんな夏の間、ある1週間だけ京都の夏を思い出すような蒸し暑い時期があった。私が何かに憑かれたようにある作品を制作していたのはちょうどその時期だった。その時期、あるイメージが繰り返し頭の中に現れては消え、また現れた。その正体が何なのか考えようとしたが、急激に本格的猛暑に転換した気候に体が順応せず、意識も朦朧としていて、いろいろ考える余裕などなかった。
取りあえず、そのイメージを何とか形にしてみようと思い立ち、一気呵成に描き上げた。繰り返し、気が済むまで描き続けた。それは小宇宙のようなものだった。その有機的な形の間を幾何学模様の単細胞動物のような物が浮いている8枚組みの連作ができあがった。この連作を仕上げて間もなくして、自分が妊娠していることに気づいた。それは、2003年失った命が、また蘇ったかのようだった。私はその連作に「生」とうタイトルを与えた。