サンフランシスコ便り 2005

第3章 妊娠とアメリカの社会保障制度

この命だけは、どんなことがあっても守り抜かなくてはいけないと思った。出産の費用は私の旅行者保険では保証されないし、学生ビザでアメリカに滞在している身分としては、公に働くこともできない。医療費の高いアメリカでの出産は、その費用を考えると難しいものがあった。

あちらこちらに相談するうちに、MEDICALと呼ばれる社会保障があることがわかった。妊娠から出産にいたるまでの全ての費用は、このシステムにより支払われるというものだ。当時、アメリカ内に何の財産も持たず、無職の独身女性の私には、このシステムが適応されて、お金の心配をする必要がなくなった。さすが世界一の大国アメリカ、懐が大きいと感心した。

とはいえ、アメリカの社会保険制度の内情は、世界の先進国と比較して、最も手薄いともいわれる。なぜなら、日本にあるような国民健康保険という制度がアメリカにはなく、国民は保険に入りたかったら、全て自費か、雇用主となる企業などのサポート受け、民間の保険会社と契約しなくてはならない。アメリカ国民の半分は何の健康保険にも入っていないというのは驚くべき事実である。

アメリカの税制をとってみても、最富裕層は税金逃れの方法がいくつもあり、ほとんど税金を払っていないと言われる。最下層は、全く働かず、無料の宿泊施設を利用したり、食糧配給があったりと手厚く保護されている。それに対して、国民のほとんどを占める税金の主な荷い手である中間層の人々は、公的な恩恵をほとんど受けることもなく、働いても働いても、のしかかる重税のために一向に暮らしが楽にならないというのが今のアメリカの内情でもある。


もどる |